1. エディントンのイプシロン
エディントンのイプシロンはと定義される。ここでi1,…,in∈{1,…,n}である。evenは(i1,…,in)が(1,…,n)の偶置換である場合、oddは(i1,…,in)が(1,…,n)の奇置換である場合、otherwiseはそれ以外の場合を表す。
計量テンソルをgijと、その行列式をgとすると、
が行列式の定義である。よって
も成り立つ。さらにこれを変形した
も使うことがある。
ちなみに、相対性理論でエディントンのイプシロンが出てくる場合は、符号が異なっている。これについては
のようにする。このときの左辺の記号が相対性理論におけるエディントンのイプシロンに相当する。
2. ホッジ双対の定義と計算の概略
内積が定義されたn次元ベクトル空間をVとし、λ∈∧pVに対してそのホッジ双対*λを、以下の式が任意のμ∈∧n-pVで成り立つような∧n-pVの元として定義する。ただし
とし、∧n-pVに定義された内積を<|>n-pと表記している。考えやすさのために、最初は1≦i1<…<ip≦n, 1≦j1<…<jn-p≦nとするが、この制限は必要ないことを最後に考察する。
まず*λを計算する前に、
をみたすfλ∈∧n-pV*を計算をする。それから
となる*λを求める。
以下の計算は複雑に見えるかもしれないが、やっていることは、この記事の計算と同じである。もし複雑に感じたらn=3でp=1などとして、書いてみるとよい。
3. 基底のホッジ双対の計算
早速 λ = ei1 ∧ … ∧ eip に対し fλ ∈ ∧n-p V* を求めよう。まず λ∧μ ≠ 0 の場合を計算する。このときは μ ∈ ∧n-p V*
なので
となる。また、 fλ ∈ ∧n-p V* を
とおくと、
である。ここで・記号は ∧n-pV* を ∧n-pV に作用させることを意味し、
となることを使った。この値が-1にならないのは、1≦j1<…<jn-p≦nかつ1≦k1<…<kn-p≦nとしたためである。
式(1)と式(2)を
にあてはめると、今{i1,…,ip}∩{j1,…,jn-p}=∅ の条件下で考えているので
を得る。
次に λ∧μ = 0 の場合を計算する。 μ ∈ ∧n-p V* であり、
なので、これ同様に計算すると、同様に式(2)が成り立つ。λ∧μ = 0 と式(2)を
にあてはめると
を得る。
式(3)と式(4)より
となる。
最後に
を使って*λを求めるときは、fλのej1をΣgj1l1el1のように置き換えればよいので、
となる。ここまでで、基底のホッジ双対を求めることができた。
以上の議論において、1≦i1<…<ip≦n という条件は使われていないことが分かる。つまり上記の結果は、この制限なしで一般に成り立つことが分かる。さらに 1≦j1<…<jn-p≦n と、fλの 1≦k1<…<kn-p≦n も必要ない。ただし、この場合、基底と双対基底について同様の決め事は必要である。例えばn=3でp=1を考える。1≦j1<j2≦3 , 1≦k1<k2≦3 とするのであれば、双対基底はe1∧e2, e1∧e3, e2∧e3となり、μはこれらの添え字を下げたものe1∧e2, e1∧e3, e2∧e3のいずれかとするが、もし1≦j1<j2≦3 , 1≦k1<k2≦3 としないとしても、双対基底をe1∧e2, e2∧e3, e3∧e1のように決め、μの値もこの中の添え字を下げたものから選ぶ必要がある。そのようにすれば1≦j1<…<jn-p≦n と 1≦k1<…<kn-p≦n という条件もなしで上記の議論は成り立つ。
上記のfλと*λの式は、次のような形で表記する場合もある。いくつか挙げておくが、計算することで相互に変換することが可能である。
4. 双対基底の場合
双対基底のホッジ双対はどんな式で表されるのだろうか。次はこの点を考察する。内積が定義されたn次元ベクトル空間をV、その双対空間をV*とする。λ∈∧pV*に対してそのホッジ双対*λを、以下の式が任意のμ∈∧n-pV*で成り立つような∧n-pV*の元として定義する。
ただし
とする。
λ = ej1 ∧ … ∧ ejn-p に対し fλ ∈ ∧p V を求めると
となる。また、*λは
のようになる。
5. 具体的な例
基底{e1, e2, e3}はをみたす正規直交基底であるとし、基底{e'1, e'2, e'3}との間に
の関係が、逆に書けば
の関係が成り立っているものとする。
このとき、基底{e'1, e'2, e'3}に関する計量テンソルの行列表現と逆行列、そして計量テンソルの行列式は
である。
双対ベクトルφに対応するベクトルvを
で表すとすると、双対基底には
のようにベクトルが対応する。
そのため、基底のホッジ双対を次のように計算できる。
n=3,p=3とすると、
さらに、i1=1, i2=2, i3=3とすると
となり、これは e'1, e'2, e'3 で成る平行六面体の体積になっている。
また、n=3,p=2とすると、
ここで、i1=1, i2=2とすると、j1=3となり
のように計算できる。これは
のように計算できるので、方向は e3 方向、大きさは e'1 と e'2 がつくる平行四辺形の面積になっている。