今回の記事では、ホッジスター作用素の定義は二種類あるが、互いにsgn(g)倍の違いしかないことを見る。本によって定義が異なっていても相互の関連性が分かると、それらを読みやすくなる。
sgn(g)、σ~、σなどの記号の意味は前回と同じとする。
ホッジスター作用素の2つの定義
定義1ベクトル空間∧pVから∧n-pVへの作用であるホッジスター作用素1を次の式で定義し、記号*で表す。
ただし*λは、与えられたλ∈∧pVに対して、すべてのμ∈∧n-pVでこの式を成り立たせる∧n-pVの要素である。
ベクトル空間∧pVから∧n-pVへの作用であるホッジスター作用素2を次の式で定義し、記号★で表す。
ただし★λは、与えられたλ∈∧pVに対して、すべてのμ∈∧n-pVでこの式を成り立たせる∧n-pVの要素である。
ちなみに上記の定義1と定義2でλ∈∧pV*としたならμ∈∧n-pV*であり、そのときはσ~∈∧nVでなくσ∈∧nV*を使う。
2つの定義の関係
以下で*と★がをみたすことを示す。(定義1と定義2でσ~は同じ値とする)
その際、証明なしで
を使う。
(証明)
定義2より
ここでτ=★λとおいて、定義1を使うと右辺は
よって
である。これが任意のμについて成り立つので、内積の対称性と非退化性より
である。
両辺に*を作用させると左辺は*λで、右辺は*の線形性と上記の**の作用結果より
である。
以上より
すなわち
である。(証明終わり)
ここから分かることは、計量テンソルの行列表現[gij]の行列式が正のとき(特に正定値内積のとき)は*も★も同じ作用になるということである。
そして、計量テンソルの行列表現[gij]の行列式が負のときでも、sgn(g)倍すれば他方の定義の場合にすぐ変換できる。
具体例1
計量テンソルがとなるように二次元ベクトル空間に内積を入れる。sgn(g)=-1なので
は
となり、*の作用は
のようになり、★の作用は
のようになる。
このように、sgn(g)<0のときは*と★の作用結果はsgn(g)だけ異なる。
具体例2
前回の記事よりなので上記の関係性より
σについても同様に
具体例3
前回の記事よりなので、やはり上記の関係を使うことで
同様にσについて
が成り立つ。