球面上のベクトル場の回転の定義
2次元球面S2上に自然基底{e1, e2}が張られているとする。(u1,u2) = (θ,Φ)によるパラメータ付け、自然基底、計量テンソルはここと同じものとする。S2上のベクトル場v = v1e1 + v2e2(共変成分表示)に対して、回転rotvを次の式で定義する。
ただし∇1と∇2は共変微分である。
行列に配置すると見やすい。
計算例
球面上のベクトル場vを反変成分表示で、v = v1e1 + v2e2 = 0e1 + sinθe2
とする。これは図で表すと次のようになる。
この図では、x軸、y軸、z軸それぞれの正の方向を赤、緑、青で表している(左手系)。θが0(球面のz軸正付近)に近づくにつれ、vの大きさが0に近い値になり、矢印も小さくなっている。また、vの向きはx軸の正の方向からy軸の正の方向に沿った向きになっている。これはe2がΦに沿った向きだからである。
共変成分表示と反変成分表示の変換のため、次のように自然基底の添字の上げ下げを用意する。
これを使って、まずは上で定義されたvを共変成分表示に直すと、
先ほどのベクトル場の回転の定義より、
ここで、共変成分の回転のときは共変微分を偏微分に置き換えられることを使った。
ここに現れる成分は0<θ<π/2で正、π/2<θ<πで負になることが次のグラフからわかる。
また、添字が上付きの自然基底は
のように添字下付きの自然基底で構成される。ここで[gij]は、計量テンソルの行列[gij]の逆行列。
計算結果から分かること
球面のz>0部分を北半球、z<0部分を南半球、z=0の部分を赤道ということにする。また、z軸と球面の交点でz>0の点を北極、z<0の点を南極ということにする。
e1はθに沿う向きなので、北極から南極への向きである。
e2はΦに沿う向きなのでx軸正の方向からy軸正の方向への向きである。
よって、e1∧e2はe1からe2へと回転する向きである(上の球面上のベクトル場の画像では左手系なので原点をみて時計回りの向き)。
これらを踏まえると、上記の計算結果から次のことがいえる。
rotvは北半球では係数が正なのでe1∧e2と同じ向き、南半球では係数が負なのでe1∧e2と逆向き。
これは風車に例えると次の考えに対応している。北半球に風車を(回転軸が球面に垂直になるように)置いたとすると、北極側のvの大きさより赤道側のvの大きさの方が大きいため、(左手系で原点を見て)時計回りに風車は回転する。南半球に置いた場合は同様に考えると逆向きに回転する。