まずは、この記事での表記について。
・gは計量テンソルの行列表現[gij]の行列式を表す。
・|x|は実数xの絶対値を表す。
・sgn(x)は定義域が実数全体で
x > 0 なら sgn(x) = 1
x = 0 なら sgn(x) = 0
x < 0 なら sgn(x) = -1
の実数値関数を表す。
・n次元ベクトル空間Vの基底を
で表す(正規直交基底とは限らない)。
・Vの双対空間をV*の基底を
で表し、Vの基底との間に
が成り立つとする(δijはクロネッカーのデルタ)。
今回はnベクトルの要素である、∧nVの元
と、∧nV*の元
が主役である。
σ~の符号として+を選んだ場合は、σの符号も+を選ばなければならず、
σ~の符号として-を選んだ場合は、σの符号も-を選ばなければならない。
以下、この記事での±は上記で自分が選んだ符号に従って読んでいただきたい。
前回の記事(「ちなみに上記のことを特にp = nで考えると、」の部分)により、
内積を使って定義した∧nVから∧nV*への同型写像をfとすると
である。g = sgn(g) |g| であることと、fが線形であることに注意すると、
である。
また、前回の記事と同じ記号で上記fの逆写像をhとすると
である。よってhが線形なので
このようにσとσ~は同型写像fとhにより同一視できることがわかる。ただこの記事では同一視はしない。
さて、このσとσ~は非常に良い性質をもっている。以下でそれを述べる。
内積
σ~の内積はσの内積は
ホッジ双対
ベクトル空間∧pVから∧n-pVへの作用であるホッジスター作用素*を次の式で定義する。ただし*λは、与えられたλ∈∧pVに対して、すべてのμ∈∧n-pVでこの式を成り立たせる∧n-pVの要素である。
ここでσ~は最初に定義したのと同じで、
とする。
また、ホッジスター作用素*を作用させた*λを、λのホッジ双対という。
また、双対空間についても同様にして、ベクトル空間∧pV*からベクトル空間∧n-pV*へのホッジスター作用素*を、
である。
上記同様、ホッジスター作用素*を作用させた*φを、φのホッジ双対という。
さて、σやσ~のホッジ双対はどうなるのか計算してみる。
λ=σ~ ∈∧nVでμ=1 ∈∧0V=Rとし、*λ=a ∈Rとおく。
と計算できるので、a=1つまり
同様にして
と計算できる。
ここで重要なことが2つある。
一つ目は、*σ~=1と*σ=1には±や̠∓のような複合が現れていないということである。
これは、σ~とσの定義で+を選ぼうが-を選ぼうがホッジ双対が1になることを意味している。
二つ目は、ホッジスター作用素の定義には別の定義があり、それを採用すると右辺がsgn(g)倍になるということである。詳しくは次の記事で論じる。
ついでに1のホッジ双対も計算してみる。
λ=1 ∈∧0V=Rでμ=σ~ ∈∧nVとし、*λ=aσ~ ∈∧nVとおく。
なので、a = sgn(g)となり、
である。1は∧0V*(=R)の要素のため、同様の計算により
が分かる。
この結果もσ~とσの定義のときに+や-のどちらを選ぶかに依存していない。
また、ホッジスター作用素の別の定義を採用すると右辺のsgn(g)が無くなる。
次回はσ~を使いホッジスター作用素の二つの定義の関係を考察する。
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