2013年12月10日火曜日

ホッジスター作用素が線形であること

前回の記事で定義したホッジ双対の*を作用素としてみたとき、この作用素のことをホッジスター作用素という。今回の記事ではこれが線形であることを示す。もし線形であることがいえれば、基底についてホッジ双対を計算を使い、任意のベクトルについても計算がしやすくなるためである。

*(λ+μ) = *λ + *μであること

まずは和について示す。λ,μ∈ΛpV、σ∈ΛnVのとき、任意のν∈Λn-pVについて


ここで、内積の双線形性とウェッジ積の多重線形性を使った。
σ≠0なので、


内積が非退化性(任意のuについて<z|u>=0ならばz=0となること)をもつので、



*(kλ) = k(*λ)であること

次はスカラー倍について示す。λ∈ΛpV、k∈R、σ∈ΛnVのとき、任意のν∈Λn-pVについて


ここで、内積の双線形性とウェッジ積の多重線形性を使った。
σ≠0なので、


内積が非退化性をもつので、


 以上より、k, m ∈R とλ,μ∈ΛpVについて *(kλ + mμ) = *(kλ) + *(mμ) = k(*λ) + m(*μ)がいえるため、ホッジスター作用素*は線形である。次回は2次元の任意のベクトルで実際に計算してみる。

2013年11月21日木曜日

ホッジ双対の計算(n=2の場合)

 外積代数の本を読んでいると、3次元でのクロス積との関連でホッジ双対の概念が紹介されることがある。「微分形式と接続」の本で、3次元のときの基底のホッジ双対が計算例として紹介されていた。3次元以外の計算も試すことで、理解を深めてみたい。そこで今回は、ブログを書くリハビリもかねて計算手順を整理してみた。

ホッジ双対の定義

実際の計算に入る前に、まずホッジ双対を定義する。ベクトル空間をVとする。λ∈ΛpVに対してホッジ双対*λ∈Λn-pVを、次の式がすべてのν∈ Λn-pVについて成り立つように定義する。

ここでσ∈ΛnVは、Vの基底に対応するΛnVの基底である。


n=2の場合の計算

この定義のもとに、2次元のときの基底のホッジ双対を計算してみる。
V=R2、σ=e1Λe2とし、λ=e1に対する*λ∈Λ2-1R2 (= R2)を計算する。*λ=ae1+be2とおくと、


ν=e1とすると、


ここで、<e1|e1>=1、<e2|e1>=0なので、



よって、a=0。
次にν=e2とすれば、


ここで、<e1|e2>=0、<e2|e2>=1なので、


よって、b=1。
これらより、


 同様に、λ=e2とすると

  がいえる。


  以上で基底についてのホッジ双対を計算することができた。次回は、ここで現れた作用素*が線形であることを述べる。線形なら、R2の任意ののベクトルについてホッジ双対が計算できるためである。


※ 以下は追記内容

n=2でp=2の場合

V=R2、σ=e1Λe2とし、λ=e1Λe2に対する*λ∈Λ0R2 (≅ R)を計算する。*λ=kとおくと、


μ∈Λ0R2(≅ R)のため、μ=1とするとホッジ双対定義式の左辺は、


ここで k ∈ R と u ∈ R2 について、kΛu = ku (実数とベクトルのウェッジ積は、ベクトルの実数倍とすること)を使った。
一方、ホッジ双対定義式の右辺は、


ここでは、<1|1>0 = 1 を使った(以前に定義した記事)。
これらより、

したがって、

これは、2次元ベクトル空間の外積になっているのがおもしろい。a, b ∈ R2 について、a = a1e1 + a2e2、b = b1e1 + b2e2とすると、

となる。これは2次元ベクトル空間の外積と同じである。この外積の双線形性と交代性は、ウェッジ積の多重線形性と交代性、ホッジスター作用素の線形性から分かる。